装飾 背景

科学的根拠に基づきコンディショニングを社会に実装し、『人類のポテンシャル』を引き出す


2026.05.13

株式会社TENTIAL イノベーション本部CRO室 室長 市川 佑樹

健康を「守る」から「前向きに楽しむ」へ。TENTIALの挑戦

――まず初めに、TENTIALがどのような視点で事業に取り組んでいるのか、企業のミッションと共にお聞かせください。

市川: 弊社は「健康に前向きな社会を創り、人類のポテンシャルを引き出す」というミッションを掲げています。現代社会において、疲れやストレス、身体的な不調を感じている方が非常に多いですが、私たちはそれらを単に「マイナスをゼロに戻す」だけでなく、その先の「自分自身の可能性(ポテンシャル)」を最大限に発揮できる状態を目指しています。そのための手段として、私たちは「コンディショニング(体調に関わる全ての要因を良い状態に整えること)」という概念を社会に根付かせようとしています。事業としては、リカバリーウェア『BAKUNE』をはじめとする製品の企画・開発、販売等を自社で手がけています。私たちが最も大切にしているのは「エビデンス(科学的根拠)」です。世の中にはイメージ先行の健康グッズも少なくありませんが、私たちは科学的に効果が証明された「本物」を届けることに一切妥協しません。

――貴社が考える、他社にはない「強み」はどこにあるのでしょうか。

市川: 一つは、科学的根拠に基づいた製品づくりです。早稲田大学や筑波大学といった専門の研究機関と共同研究を行い、機能性に対してエビデンスを取得しています。 もう一つは、組織の機動力とスピード感です。現在、従業員数は約200名規模ですが、上場企業としての信頼性を持ちつつも、みんながミッションとビジョン、バリュー(MVV)に基づいて行動しています。この「エビデンス」と「組織力」の両輪が、私たちの最大の武器だと言えます。

――市川さんは「公共政策担当」として、具体的にどのような活動をされているのでしょうか。

市川: 私の役割は大きく分けて二つあります。一つは、行政や他企業と連携したコンディショニングを活用した社会課題の解決。もう一つは、業界全体の健全化です。現在、リカバリーウェアの市場が急拡大する一方で、残念ながらルールを守らない不適切な表示を行う会社も増えています。私たちは厚生労働省から通知されている一般社団法人日本医療機器工業会の自主基準に基づき、薬機法や景表法を遵守して販売していますが、企業の責任としてしっかりと基準を遵守することが何よりも重要だと考えています。

――それは自社の利益を守るためだけでなく、市場を守るためだと?

市川: おっしゃる通りです。不適切な表示が原因で、消費者の方々に誤解を与えてしまうと一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」というカテゴリー自体の信頼が揺らぎ、規制強化につながるような状況になれば、ルールを守っている誠実な企業まで損をしてしまいます。PSBA(PHRサービス事業協会)のような場を通じて、正しい基準を共有し、業界全体で安心して「本物」を提供し続ける環境を整えることが、結果としてユーザーの利益を守ることに繋がると信じています。

――PHRの具体的な社会実装の事例として、どのような成果が出ていますか。

市川: 象徴的なのは、運送業界の睡眠課題解決の取り組みです。ドライバーの過労は大きな社会問題として捉えられており、その中でも睡眠不足は直接的にドライバーの事故に繋がることもあります。そこで大橋運輸様と運輸業の睡眠課題を解決する実証実験を実施し、各種の睡眠パラメーターの改善傾向が示されました。PHRで睡眠を可視化することで、「プロとして良い運転をするために、今日は早く寝よう」といった自律的な行動変容が期待されます。これは、従業員の健康が守られ、企業の事故リスクが下がり、社会の安全が確保されるという「三方良し」のモデルです。健康経営や睡眠を含むコンディショニングは単なる福利厚生ではなく、未来への投資であると考えています。

――地方自治体との連携についても教えてください。

市川: 静岡県三島市と包括連携協定(コンディショニング協定)を結んでいます。自治体にとっては住民の健康寿命延伸や医療費適正化が課題ですが、私たちは三島市とPHRを活用した睡眠改善プログラムに取り組んでいます。現在は実証段階ですが、今後はこれを三島市内の企業へ展開していく予定です。自治体、企業、そしてTENTIALが、それぞれのメリットを享受しながら、持続可能な形で健康をアップデートしていく。こうしたモデルを地域から全国へ広げていきたいと考えています。

「睡眠」を資産に変える。PHR事業が拓く新時代のヘルスケア

――PHR(Personal Health Record)事業に本格的に乗り出した経緯と、その狙いを教えてください。

市川: 2023年頃から、ウェアラブルデバイスを活用したPHRの取り組みを本格化させました。GoogleのFitbitやSOXAI RINGといったデバイスから得られるバイタルデータを活用し、睡眠の質や活動量を可視化・検証する試みです。私たちの狙いは、弊社の製品やプログラムを使用することによって、実際に健康課題(特に睡眠課題)がどれだけ改善されたかをデータで実証することにあります。製品を売って終わりではなく、その後の変化まで伴走する。これが私たちが現在取り組んでいるPHRの形です。

――データを活用することで、これまでのヘルスケアと何が変わるのでしょうか。

市川: 「納得感」のある改善が可能になります。私たちは、デバイスが示す「客観的な数値」と、本人が自分の睡眠をどう感じたかという「主観的なアンケート」の両面を測定します。 たとえば、スコアが良くても本人が「体が重い」と感じているなら、そこには必ず理由があります。逆に、スコアは低くても本人が睡眠に満足を感じている場合もある。この「客観と主観のギャップ」をデータで紐解くことで、「枕を変えてみよう」とか「寝る前のスマホを控えよう」といった、自分に最適な具体的アクションに繋げることができるのです。睡眠を「なんとなく」ではなく、管理可能な「資産」に変えていく。これがPHRにより可能となります。

PHRサービス協会(PSBA)での役割。競合を超えた「標準化」への挑戦

――PHRサービス協会(PSBA)における御社の活動内容について詳しくお聞かせください。

市川: 弊社はPSBA内の「標準化委員会」に設置された「睡眠サブワーキンググループ」に参画しています。ここでは、睡眠関連サービスを提供する競合他社とも席を並べ、睡眠データの利活用におけるルール作りや標準化について議論を重ねています。

――競合他社と同じテーブルで議論することに、どのような意義を感じていますか。

市川: 非常に大きな意義を感じています。これまでは各社が独自の基準でデータを扱っていましたが、PHRを社会インフラにするためには、共通の物差しが必要です。特に睡眠サブワーキングに参画した約1年前から2週間に1回、あるいは1ヶ月に1回という高頻度で対話の場が持てるようになりました。これまで交流がなかった他社と、「どうすればユーザーにとって最適なデータ活用ができるか」、「どのような睡眠のユースケースが想定されるのか」を真剣に話し合えるようになったことは、業界全体の大きな進歩です。一社で成し遂げられないことも、協会というプラットフォームがあれば、「社会の共通言語」として標準化を加速させることができます。

テクノロジーは「黒子」。身体感覚を取り戻す未来のウェルビーイング

――これからのPHR、そしてコンディショニングの未来をどう見据えていますか。

市川: テクノロジーは前面に出るのではなく、日常に静かに溶け込む存在であるべきです。ウェアを着て寝るという当たり前の生活の中に、高度なヘルスケアが組み込まれている状態が理想です。そして将来的にはAIが蓄積されたデータを分析し、「明日のパフォーマンスのために、今夜はこの時間に寝るのがベストです」と、そっと助言をくれる。昨年の大阪・関西万博でPHRを利活用した未来を体験し、そのような世界の実現に大きな可能性を感じました。

――最後に、読者やパートナー企業へのメッセージをお願いします。

市川: 最終的な判断軸は、常に自分自身の中にあります。データは、自分の身体の声を聞くための「鏡」に過ぎません。数値に支配されるのではなく、データを通じて自身の身体感覚をより深く理解していくことが重要です。 PSBAの活動を通じて、企業の垣根を超えて協力しながら、誰もが毎日をベストコンディションで迎えられる社会を創っていきたい。私たちの挑戦はまだ始まったばかりですが、ともに人類のポテンシャルを引き出す未来を創っていきましょう。

――お忙しい中、ありがとうございました。

株式会社TENTIAL
https://tential.jp
〒141-0001 東京路品川区北品川2-7-29 5F
2018年創業のコンディショニングブランドで、アスリートの知見と最新技術・研究に基づき、機能性を追求した製品・サービスを提供。24時間365日、日常生活のあらゆるシーンで心身を整え、疲労回復やパフォーマンス向上をサポートするコンディショニング活動を推進している。

市川 佑樹
イノベーション本部CRO室 室長
健康のために心がけていること:入社以来、自社製品を愛用。地方へ足を運んだり、意識的に余白を設けることで、心身のコンディションを整えている。日常の忙しさから距離を置き、リズムをリセットすることを特に意識。

資料イメージ

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