装飾 背景

業種の垣根を超えた「初の試み」とその舞台裏


2026.07.13

塩野義製薬株式会社/DX 推進本部データサイエンス部データエンジニアリング2グループサブグループ長
PHR サービス事業協会 標準化委員会 ライフログ標準化 WG リーダー
桂木 龍一(右)
塩野義製薬株式会社/DX 推進本部データサイエンス部データエンジニアリング2グループ
PHR サービス事業協会 標準化委員会 副委員長
浜崎 一良(左)

初の共同出展に沸く、幕張メッセ会場より

PHRサービス事業協会(PSBA)は、2026年6月10日〜12日の3日間、幕張メッセ(千葉県)で開催された国内最大級のICTイベント「Interop Tokyo 2026」に、Sleep Innovation Platform(SIP)と共同出展し、当協会の会員企業である西川株式会社、パナソニック株式会社、株式会社オケイオス(久留米大学との共同研究として出展)がブースを構え、各社のPHR関連の製品を展示。業種の垣根を超え、会員企業が協力し合ってアピールする初の試みとなり、連日、大勢の来場者が各社のブースで製品の紹介を受けていた。最終日、今回の共同出展の仕掛け人でもある塩野義製薬(株)の桂木氏と浜崎氏の両氏に会場で話を伺った。

治療から予防へ。老舗製薬企業がPHRに挑む理由

―まず初めに、塩野義製薬(株)がどのような視点でPHR(Personal Health Record)事業や協会での活動に取り組んでいるのか、企業の背景と共にお聞かせください。

桂木:弊社は大阪発祥の老舗製薬企業であり、主に医療用医薬品をメインの事業としています。特に感染症や中枢神経系といった領域に強みを持っています。
これまで製薬会社の主な役割は、病気になった後の「治療薬」を提供することでした。しかし、一人ひとりが活き活きと生活できる社会の実現を考えたとき、いかに「健康状態を維持」するか、「病気を予防」するか、「早期発見し早期治療」につなげるか、そして服薬した後の日常(予後)をどうケアしていくかという視点が不可欠です。
弊社では経営戦略の1つとして「HaaS(Healthcare as a Service:ヘルスケア・アズ・ア・サービス)」を掲げており、治療だけでなく、検査、未病、予防、予後までをトータルでケアすることを目指しています。このトータルケアを実現するための鍵となるのが、医療機関のデータだけではカバーできない、日々の日常的な健康データである「PHR」なのです。

―PHRが社会にとって必要だと考える点はどのようなところでしょうか?

桂木:弊社はPHRサービスに直結する商品はありませんが、国民の健康を考えるにあたって、病気の早期発見や服薬後の治療効果の把握に役立つと考えております。PHRから得られる多様な情報は、適切な同意やルールのもとで活用することにより、医薬品の研究開発や育薬の高度化に貢献することが期待されています。そして、PHRで得られたデータを蓄積していくことで将来的に役立つ可能性があると考えます。 なので、より健康に生活を送るためには、PHRを活用し、自分の体調データを未来への健康資産として積み立てていくような感覚を持つことが重要であると感じています。ただデータを集めるだけでなく、睡眠と歩数を掛け合わせるなど、目的に応じた工夫や有益なユースケースを増やしていくことが、これからの私たちの課題です。

競合や業界を超えた「共通の物差し」としての標準化

―今回、PHRサービス事業協会(PSBA)として「Interop Tokyo2026」に共同出展されましたが、どのような経緯で実現したのですか?

浜崎:このイベント主催者から声がかかり、その際に今回スリープテック特別企画に関するお話を伺って、「これはPHRサービス事業協会として、新たな連携価値を創出できる」と考え、出展する運びとなりました。
弊社も属しているPHRサービス事業協会の標準化委員会にはライフログ標準化ワーキンググループ(WG)があり、その直下に睡眠サブWGがあります。睡眠サブWGに所属する企業中心に、ご協力いただくことによって標準化委員会の取り組みを、外部企業にアピールしていくチャンスだと考えました。

―出展しての手応えを感じていらっしゃいますか?

浜崎:Sleep Innovation Platform(SIP)と、睡眠サブワーキンググループに参画する企業3社様(西川、パナソニック、オケイオス)で出展しました。結論から言うと想定以上に来場者の方が来られて、ひっきりなしに、立ち寄っていただいているという状況でした。「Interop Tokyo2026」自体は、IT関連のエンジニア向けのイベントだとは思いますが、いい意味でスリープテックというのは少し浮いていて、目立っているように思います。(笑)

桂木:あと、「睡眠」というテーマが、企業にせよ、個人にせよ、生活に密接に関連していて、多くの方にとって関心があるテーマだと改めて感じました。良質な睡眠をとって生活を豊かにしたいという根底の部分を皆さんお持ちだし、じっくりお話しする中で、インターロップのメインテーマである「相互運用性(インターオペラビリティ)」と、私たちが進める「PHRの標準化」との高い親和性を、多くの来場者に共感していただけています。産業の発展や、ユーザーにとっての使いやすさを追求する上で、標準化がいかに大きなポイントであるかを改めて再認識しました。

―改めて、標準化委員会ではどのような議論や活動を行っているのでしょうか。

浜崎:標準化委員会には「システム化」と「ライフログ標準化」の2つのワーキンググループ(WG)があります。システム化WGは主に「医療機関とPHRサービスの連携」をメインに議論しており、今年度はPGHD IG(Patient Generated Health Data 実装ガイド)(PGHD IG…※PHR(Personal Health Record)サービス事業者と医療機関(電子カルテ等)の間で 円滑なデータ連携を実現するための実装ガイド)PGE(Programmable Group Environment/共通のデータ流通環境)を公表するという大きな成果を出しました。

桂木:一方で、私がリーダーを務めるライフログ標準化WGでは、「PHRサービス事業者間の連携」に注力しています。各社それぞれに競争領域や異なる思いがある中で、バランスを取りながら論点を整理し、「事業者観点で規格や標準フォーマットをどう捉えるべきか」「どのようなユースケースであれば標準化のメリットを生かせるか」といった第一歩の整理を、対話を通じて進めてきました。

一社では成し遂げられない未来へ。PHRサービス事業協会を共創の「ハブ」に

―今後のPHRサービスは、社会や個人に対してどのように発展していくと思われますか。

桂木:やはりPHR標準化が発展の鍵になると思います。現状ではデータのフォーマットや規格が整っていないため、弊社をはじめとした製薬会社などのデータを利用したい側から見ても、課題が残されていると感じております。標準化に関わる企業は業種も提供するサービスも多種多様です。それぞれが独自のビジネス(競争領域)や異なる思いを持っているため、どこを共通の「落としどころ(論点)」にするかの合意形成や、立ち上げ期の議論を整理するだけでも非常に大きな労力を要します。標準化が整えば、もっと活用の範囲が広がり、シンプルに「一人ひとりが健康に暮らし、もし病気になったとしても適切な医療を受けられる社会」が実現できると考えています。

浜崎:PHRは自分の体調に関心を持つきっかけになります。
PHRは、健康状態の変化を継続的に記録・把握することで、早期の気づきや適切な受診を支援するとともに、疾患を抱えた後のセルフマネジメントやQOLの向上に役立つことが期待されています。 さらに、睡眠データを活用することで、単なるヘルスケアの枠を超え、日々の「快適さ」や「ウェルビーイング(幸福感)」の向上にもつながると期待しています。

―最後に、今後PHRサービス事業協会への入会を検討されている企業へ向けてメッセージをお願いします。

浜崎:標準化委員会に所属している立場から申し上げると、PHRサービス事業協会は、業種も業態も異なる事業者団体ですので、PSBAに所属する各事業者が、行政、アカデミア、大学、病院、各種ステークホルダーとを繋ぐ「ハブ」のような存在にPSBAがなればいいな、と思っています。
そして、標準化委員会で統一のルールを一緒に作り、その世界観に共感していただき、外部に共有していければと思います。もちろん自社のマネタイズを考えないといけないという使命はあるとは思いますが、健康社会作りの仲間として参画していただきたいです。

桂木:日本には素晴らしいセンサー技術をはじめとする優れた技術や製品などを持つ企業がたくさんあります。しかし、健康やPHRの領域は、一社だけで完結させることが非常に難しい世界です。データを活用しようにも、自社だけではデータを集めることはできませんし、その先に目指しているトータルケアを実現することもできません。
だからこそ、IT企業、センサー技術を持つ企業、そして私たちのような製薬企業など、異なる強みを持つプレイヤーが協会に集まることで、非常に大きなエコシステム(相乗効果)が生まれると考えています。
行政機関との対話や連携機会も含め、非常に魅力的なプラットフォームだと自負していますので、ぜひこのエコシステムにご参画いただき、ともに未来のヘルスケアを連携して創っていきましょう!

―お忙しい中、ありがとうございました。

企業概要

塩野義製薬株式会社

〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町5-54

1878年創業以来、大阪発祥の伝統ある製薬企業として医療用医薬品の創薬に強みを持つ。現在は、革新的な製品・サービスの創出と価値提供を多様なパートナー連携を通じて実現している。

桂木 龍一

DX推進本部データサイエンス部データエンジニアリング2グループ サブグループ長
PHRサービス事業協会 標準化委員会 ライフログ標準化WGリーダー

健康を意識した活動:健康こそが仕事の成果や人生の充実につながる土台だと捉え、「健康への投資は最もリターンの大きい投資」という考え方を大切にしている。タンパク質と野菜を意識した食事、7時間睡眠、一日平均8,000歩を無理なく継続しながら、日々のコンディション管理に取り組んでいる。

浜崎 一良

DX推進本部データサイエンス部データエンジニアリング2グループ
PHRサービス事業協会 標準化委員会 副委員長

健康を意識した活動:健康のために何かしようと考えた時、知人に誘われてタヒチアンダンスを始めた。毎年複数回、各地イベントのステージに立っている。(来場者1000人以上のステージの経験あり)

Sleep Innovation Platform(SPI)

睡眠サービス・商品開発を行う企業、生活者との接点を有する企業、および最先端の睡眠研究を行うアカデミアが連携する産学連携コンソーシアム
Sleep Innovation Platform(スリープ イノベーション プラットフォーム)-国民の健康を睡眠の視点から支援する産学連携コンソーシアム

「Interop Tokyo 2026」SPIブースPHRサービス事業協会出展社

資料イメージ

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